あかりをつないでー
Akari Facility Design WEB Magazine

仕事と商売の
“できる”は違う

独立して知る会社経営の難しさと親心。

廣野 独立して、経営者としての会長の気持ちが少しずつ分かってきました。本当に甘えていたなと。会長が積み重ねてきた和泉電気工業という会社が背後にあったから、自分が思うように仕事ができていたのだと、今なら分かります。おそらく、会長が事業を興そうと決心した気持ちには、自分は及ばないと思います。

森下 確かに今は、いろいろなジャンルの仕事があって、私が起業した時代よりも多くの人にビジネスチャンスがある。けれど、決心に大も小もないと思うよ。

廣野 でも会長には、“覚悟”があったと思うのです。それはきっと、自分にはなかったものだと感じます。

森下 “覚悟”というより“気合い”かな(笑)。自分が決めた道なのだから「やるしかない!」という。私は農家を継ぐ立場にあったのだけれど、それを押しのけて起業した。だから余計に、周りに認めてもらいたいという気持ちが強かったかもしれないね。

廣野 以前、会長と同じ年代の起業された方の話を耳にしたのですが、常に「自分が決めた道、自分にはこれしかないのだから、やるしかない!」と思い続けてきたそうです。会長の言葉と同じ。やはり“覚悟”が違うなと、まだまだ自分はそこに到達していないなと。

森下 あの頃は、高度成長期真っ只中。誰もががむしゃらに働いていたし、それが当たり前の時代。起業した人は皆同じ気持ちだったのではないかな。だからこそ、会社も存続しているところが多いのかもしれない。

廣野 先人たちの気概は尊敬の念に値します。自分も会長に対しては尊敬と感謝しかありません。今の自分を支えてくれる大切な言葉のひとつに、会長のある一言があります。「仕事ができることと、商売ができることは違う」。そのときの自分は、その一言に込められた本当の意味が理解できませんでしたが、独立して自分で仕事をするようになった今なら、分かります。現場で実際に手や頭を動かすスキルと、会社を経営する立場としてのスキルは違う。けれど現場を知らなければ経営も上手くいかない。自分は和泉電気工業で仕事のスキルを磨かせてもらいましたが、同時に会長からは上に立つ者として必要なスキルのヒントも教えていただいていたのだと知りました。

森下 そんなことを言ったかな、覚えがない(笑)。

廣野 心に残る言葉を言った人は大抵、そう言います(笑)。知らず人の心に残る言葉を言っている。常に考えているから自然に出る、だからこそ重みがある。

何事も、つないでいくのは“人”。

廣野 和泉電気工業での13年は、今の自分にとってかけがえのない時間だったと思っています。その恩を裏切って独立したという気持ちが自分の中にあって、9年経った今も、会長に何も恩返しができていないのが歯がゆいと感じています。

森下 今こうして廣野君が自分の仕事に責任と自信を持ってここにいることが、すでに恩返し。今はあの頃よりもっと時代の変化が早く、新しいことにチャレンジして他とは違う強みをアピールしていかないと、仕事が成り立たない。変革の時代には若い力が必要。私も昨年、息子に社長の座を譲ったし、次世代の人たちが新しい関係を築いて、お互いに切磋琢磨していってくれればいいと思っているよ。

廣野 そう言っていただけるなんて、涙が出そうです。確かにこうして会長とお会いできるのも、現社長に声を掛けていただき、仕事のつながりができたから。

森下 仕事も人生も、自分一人では上手く回らないもの。周りのサポートがあっての仕事と人生。人のつながりをより意識していかなければ、これからの時代、生きるにしても仕事をするにしても難しいだろうね。

廣野 人のつながりというのは、独立してより大切に感じるようになりました。新しいことにチャレンジしようと思うのは、いつも周りの人から刺激を受けたときですし、実行するときは必ず周りのサポートが必要になります。和泉電気工業さんのように同業者や異業種などさまざまですが、いろいろな人と出会って仕事をするのは楽しいですし、ビジネスチャンスも広がっていくように思います。

森下 私もあと5歳若ければ、いろいろなことにチャレンジしていけたと思う気持ちはあるけれど、若い世代には敵わないよ。

廣野 何を、まだまだ!経験のあるベテランから、僕らはもっと学ぶことがありますから、ご教授ください。

森下 それならば、ここで。自分が培った仕事のスキルを下の世代にしっかりとつないでほしい。そしてビジネスだけではなく、人生の上でも長くお付き合いできるような人の縁をつなぎなさい。あとは電気屋としての基本「納期と誠実」を忘れないこと。それが、廣野君のビジネスと人生を幸せなものにしてくれるから。

廣野 会長とお話することができて本当に良かったです。またひとつ、ビジネスの指針ができました。ありがとうございました。

廣野 人のつながりというのは、独立してより大切に感じるようになりました。新しいことにチャレンジしようと思うのは、いつも周りの人から刺激を受けたときですし、実行するときは必ず周りのサポートが必要になります。和泉電気工業さんのように同業者や異業種などさまざまですが、いろいろな人と出会って仕事をするのは楽しいですし、ビジネスチャンスも広がっていくように思います。

森下 私もあと5歳若ければ、いろいろなことにチャレンジしていけたと思う気持ちはあるけれど、若い世代には敵わないよ。

廣野 何を、まだまだ!経験のあるベテランから、僕らはもっと学ぶことがありますから、ご教授ください。

森下 それならば、ここで。自分が培った仕事のスキルを下の世代にしっかりとつないでほしい。そしてビジネスだけではなく、人生の上でも長くお付き合いできるような人の縁をつなぎなさい。あとは電気屋としての基本「納期と誠実」を忘れないこと。それが、廣野君のビジネスと人生を幸せなものにしてくれるから。

廣野 会長とお話することができて本当に良かったです。またひとつ、ビジネスの指針ができました。ありがとうございました。

Masatoshi Morishita
Kiyohisa Hirono

師弟関係がつなぐ
仕事のスキルと人の縁

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