照らされたものが
呼応して輝く。
深まっていくチーム感
廣野 鈴木さんと仕事をしていると、いつも僕のキャパを越えた発想をしてくれるんだよね。
鈴木 そんな風に思っていてくださって、うれしいです。私は、どうやって施工すればいいのか迷ったり困ったとき、相談することの方が多い気がして……。
廣野 もちろん。より良いものにするための融合は大事だと、僕は思っているから。まあ、純粋に電気工業者として考えたら、コーディネーターさんとの仕事は妥協点を探すというのが普通かもしれないね。現場では効率と時間、納期も重要だし。
鈴木 普通、職人さんは自分の担当する部分が終わったら仕事は終わり。完成後を見ることってあまりないですもんね。でも先日、電気工事業者さんや職人さんたちに、いろいろお願いしながらライティング設計通りに工事していただいた現場があったんですけど、完成後に職人さんたちにも一通り見ていただいたんです。そのとき、実際に灯されたライティングを見て、自分たちが苦労して携わった仕事の完成形に驚き、感動してくれて。そのとき、チームの想いがつながれるような現場がもっと増えたらいいなと思いました。
廣野 僕の経験から言うと、その職人さんたちは鈴木さんとの仕事だけじゃなく、他の現場に行ってもいろいろ対応するようになるから、職人さん自身にも仕事が増えていくと思う。そうなってくるとお互い、どんどん仕事がやりやすくなるよね。
鈴木 確かに、今の廣野さんたちとの現場は、関わってくれている人たちが最後まで見届ける感じがありますよね。チームができている。
廣野 プロフェッショナルが集まる現場だから、その道のプロの視点で意見交換していけば、クオリティは自ずと上がる。もっとチームとして施工側もお客様も満足できる現場が増えていったら、楽しいよね。
鈴木 楽しいといえば、あれは楽しかったです。一緒に仕事をし始めた頃にやった、現場に入る前にライティングの実験。覚えてます?
廣野 もちろん覚えてるよ。展示イベント系の展示照明のオファーがあったときの。自分の設計でイメージ通りになるか、どうしても不安で鈴木さんに相談した。
鈴木 マンションのモデルルームの模型展示でしたね。朝から夜までの時間経過を、タイマー制御のライティングで表現するもの。
廣野 無償で付き合ってくれて、仕事と変わらずにいろんな意見や提案をくれて、感謝してます。
鈴木 実験しながら撮ったムービー、今も時々見ています。すっごく楽しかったし、見るとモチベーションが上がるんですよね。ああいうの、もう一回やってみませんか? この対談の趣旨にピッタリだと思います。
廣野 実は、僕も鈴木さんと対談するときは、ふたりで何か創ろうと思っていたんだよね。満月の夜に。そうやって想いを巡らせていたら、自分の仕事にはどんな意味があるんだろうと改めて考えた。自分の仕事は人工的な照明“あかり”を灯すことだけど、何気ない日常の夜を照らして、暮らしや心を豊かにする力がある。それは例えると、自身が光を発して輝く太陽と照らされて輝く月の関係に似ているなと。そんな風に考えたら、人は時には太陽に、時には月になり、お互いに影響し合っているからこそ、輝くんじゃないかと思った。仕事も同じ。そういう想いが“あかり”から伝わっていったらいいなと思う。
鈴木 素敵ですね。その想いをカタチにするのはなかなかハードルが高い(笑)。うーん、そうですね、日常のシーンの中に遊び心を加えた、心が温まるようなイメージかな。お庭にある木をイルミネーションして、アウトドアリビング、っていうのはどうでしょう?
廣野 いいね。楽しそう。じゃあ、満月の夜に。
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鈴木 何か、現場で一緒に仕事をしているときと変わらないですよね、やっていることが(笑)。
廣野 それは仕事も楽しんでるってことじゃない?
鈴木 そうですね。実際に現場に来て、使う人の目線に立ったり、動作をしてみると、机上じゃ分からなかったことが見えてくる。そこをどうするか、どうしたら使う人が笑顔になるか考えるのって、すごく楽しい。
廣野 今回はどんなことを意識してる?
鈴木 遠くから見ても、座って見上げても、ふわっと笑みがこぼれるような感じ。木も、そこに集う人も、照らされて輝くような。
廣野 木もキレイに飾ってもらえることを喜んでるよ、きっと。そして僕たちもね。笑顔しか出てこない。
鈴木 こういうところから、仕事へのヒントが見つかったりするんですよね。廣野さん、今回はゲストに呼んでくださってありがとうございました。
廣野 僕こそ。今回、鈴木さんとの対談と、この「あかりネーション」創作を通して、また自分の仕事の可能性が広がった気がする。どうもありがとう。